Self-tiling tile setsについて
レプタイル その2

これは「ペンローズタイルの作り方」でもご紹介した、置換規則(substitution rule)による、模様の構成法である。いまは操作を繰り返すたび、ひとつひとつのタイルがどんどん小さくなって行くけれど、操作の都度拡大してやれば、どんどん平面を埋めていくことになる(基準の点をどこに選ぶかが平面充填のときにはちょっと問題になるけれど)。
ところで、ここまでご紹介してきたレプタイルは、どれも、縮小コピーのサイズが等しかった(互いに合同だった)。つまり、n-レプタイルが元のタイルをn等分していた。定義上は、自分の縮小コピー同士のサイズが違っていても構わないのではないかしら、と思うのだが(何か慣習でもあるのだろうか。不思議とそういうのをレプタイルと呼んでいるのは見たことがないのだが)、等分しないような例も色々と挙げることができる。

(1)~(4)は正方形の正方形による分割。等分になるときもあるが、6以上なら任意の個数に分割できる。(5)のような分割は任意の直角三角形で可能である。(6)は「正方形をサイズがすべて異なる小正方形に分割せよ」というルジンの問題の、duijvestijnによる最少個数の解。(7)はコッホ雪片というフラクタル図形である。どれも輪郭線と中のタイルが同じ形になっている。
最後の(8)はアムマンのタイルという奴で、ちょっと変則的な置換規則を使うと、サイズの異なる2種類のタイルによる"非周期的な"平面敷き詰めを構成できる。置換規則は次のようなパターンだが、ご理解いただけるだろうか。

ちなみに、アムマンのタイル張りについては、数学セミナー2012年2月号の秋山茂樹さんの記事「準結晶の数学的モデル」を参考にした。同じく秋山茂樹さんの"A NOTE ON APERIODIC AMMANN TILES"も参考になる、と思うのだけれど、ちゃんと読んでいません。あしからずご了承ください。
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6月6日、追記。英語を読まないのは悪いくせだ。wikipediaによれば、等分ではないタイプのレプタイルは、"irregular rep-tile"または"irreptile"と呼ばれているようだ。ここに色々な例があるのを見つけた。
レプタイル その1
によれば、n-レプタイルとは、次の条件(*)をみたす平面領域Rのことである。
(*) Rに相似なタイルをn個使ってR自身をタイル張りできる。
自分の縮小コピーn個で自分自身を分割できる、と言い換えても構わない。レプタイル(rep-tile)というのは、数学者ソロモン・ゴロムの命名で、「レプ」は本によってreplicationだとかreplicatingだとかreplicaだとか書いてあって、よく分からないけれど、日本語だと「複製」というのが適当なところだろう。「(自己)複製タイル」という訳である。爬虫類(reptile)に語呂合わせしてあるらしい。模様とどんな関係があるのかは後で考えることにして、とりあえず例を並べてみよう。

内角が直角の倍数のものばかり集めてみた。たとえば(2)は2-レプタイル。(3)は3-レプタイルである。(5)~(7)を見るとこのL字型は、4-レプタイルであると同時に、9-レプタイル、36-レプタイルでもある。この他にもレプタイルは沢山ある。

(25)~(28)あたりになると、多角形ではなくなって、頂点の数が無限個必要である。素焼きのタイルで作ることは不可能だけど、数学的にはとくに問題ない。
レプタイルの例の収集には、wikipediaの記事の他、模様の世界のバイブルを参考にした。ちなみに、この本の中ではレプタイルではなくて、"k-similarity tiling"と呼ばれているみたいだ。
レプタイルについて調べる中で、尊敬する折り紙作家の前川淳さんの名前がヒットした。前川淳さんの折り紙設計が、レプタイルに影響を受けていたということが、今回、改めて分かった。思わず、すでに絶版の名著のコピーを国会図書館に頼んでしまった。