今日は模様の分類について書きます。美しい
幾何学模様は眺めているだけで心が躍ります。世の中には模様の図鑑がいろいろあります。ただ、すこし不満なことがあります。多くの図鑑では歴史的・地理的な模様の分類が行われているのですが、模様そのものの持つ性質によって数学的に分類されていたら、もっと楽しいのにと私は思うのであります。
模様にはふた通りあります。周期的な模様(繰り返し模様)と、そうでない模様です。周期的な模様とは平行移動によって、自分自身と重ねることができるような模様のことをいいます。平面上の周期的な模様、いちばん普通の模様たちを分類するとどうなるでしょうか。
周期的な模様
じつは対称性によって分類すると17種類になることが知られています。といっても、なかなかイメージがわかないと思いますので、この17種類、それぞれ1種類ずつ代表を並べてみます。
パターン認識のためには豊富な例が必要です。過去の記事「模様展示の標準化 その4」「模様展示の標準化 その5」「模様展示の標準化 その7」「模様展示の標準化 その8」などで、この17種類の分類それぞれについて、たくさんの例を見ることができるので、ぜひご参照ください。
……といって例だけ見ていても、どこが違うのか分かりにくいと思いますので、分類の意味を解説しましょう。対称性による分類と書きましたが、対称性とは「ある変換に関して不変であるような性質」のことを言います。周期的な模様では「どんな合同変換に関して不変なのか」が分類の鍵になります。平面の合同変換は、平行移動、回転移動、鏡映の合成でできています。模様の分類では、じつは次の7種類の合同変換による対称性を考えれば充分です。この対称性のどれをどんな風に持っているかで、上記の分類は行われています。詳しい説明は、
wikipediaに譲ることにしましょう。
周期的でない模様
一方、周期的でない模様(繰り返さない)には、ランダムなものや置換タイリングによるものがあります。
ランダムな模様の例としては、たとえば、こんなのがあります。ドミノ(正方形をふたつくっつけてできる図形)によるタイリングですが、ところどころ向きの違うドミノをランダムに混ぜることができます。
レプタイルという特殊な図形は、いくつかの自分自身と相似なタイルに分割できるので、分割を繰り返すとどんどん細分できます。これを拡大すると、上手くすれば平面全体のタイリングが作れます。
平面以外の模様
さて、ここまで平面だけを考えてきましたが、平面の枠を超えると、また違った世界が広がってきます。複雑な曲面(
球面・
双曲平面・
その他)上の模様もありますし、3次元以上の世界で模様を考えることもできます。
周期的な模様の対称性による分類。2次元では17種類でしたが、3次元では
230種類になるそうです。過去の記事で
模様のアニメーションを紹介していますが、これらは3次元の周期的な模様(空間2次元+時間1次元)と考えることができるので、いずれも230種類のどれかに分類されるのだと思います。
3次元の非周期的な模様も知られています。たとえば、
佐藤郁郎さんのコラムを辿ると、色々な例を知ることができます。
さて。ここまでの話題だけでも、模様の世界の奥深さを垣間見ることができたのではないかと思います。知れば知るほど、いろいろな疑問が湧いてきます。曲面上の置換タイリングはないのかとか。4次元はどうなのか。気になったら、調べて自分で描いてみましょう。新しい分類方法を考えてみましょう。
そうこうしているうちに、新大陸発見のように、誰も見たことのない、新しい模様が見つかるかもしれません!