シェルピンスキーのギャスケットとスターンの二原子数列について
を読んでいると、見覚えのある数列が出てきた。基本三角形との関連で紹介されている、スターンの二原子数列。高校時代に有名なフラクタル図形、シェルピンスキーのギャスケットのことを調べていて、同じ数列に出くわしたことがあるのだ。基本三角形は、基本平行四辺形の半分なので、こじつければ模様と無関係ではないかもしれないのだが。
『格子からみえる数学』とは違う方法で、このスターンの二原子数列を構成してみよう。パスカルの三角形から始める。
いつも見るのと違うかもしれないけれど、左端を揃えてあるだけで中身は変わらない。中の数はどれも、左上の数と真上の数の和になっている。
よく知られている事実だが、パスカルの三角形からフィボナッチ数列を作ることができる。
こんな感じにパスカルの三角形の斜めのところを足し算すればよい。赤い数字の列を縦に読めば、前二項の和が次の項になっていることが確認できるだろう。
ところで、パスカルの三角形を2で割った余りを並べてみると、次のようになる。
これも有名な事実だが、これをずっと続けていくと、シェルピンスキーのギャスケットができる。
ここで、先ほどフィボナッチ数列を作ったときと同じように、斜めのところを足し算すると、どんな数列が現れるだろうか。
赤い数字。縦に読むと、増えたり減ったりしている、変な数列だ。これがスターンの二原子数列である。
このスターンの二原子数列には、次の奇妙な漸化式が知られている。
じつは、この漸化式だけからでもスターンの二原子数列を生成することができる(きちんと定義できているか不安な方は、次のように考えればよい。任意のインデックスnは偶数か奇数かのいずれかである。この漸化式を繰り返し使えば、インデックスをどんどん小さくしていくことができて、どんなnからスタートしても、有限回のステップでa1にたどりつく)。
さて。先ほどのパスカルの三角形からの構成と、この漸化式からの構成。同値であることを証明するにはどうしたらいいだろう。ここに答えは書かないので、興味のある方は考えてみてほしい。
この数列の母関数を考えてみても面白い。
と定義する。先の漸化式を上手く使うと(|x|<1なら)、
たぶん、こんな感じに変形できるはずだ(きちんと証明していないので違っていたらすみません)。
スターンの二原子数列はファレイ数列の分子にも現れる。『格子からみえる数学』でも、基本三角形に関係するのは、じつはファレイ数列の方だ。フォードの円とも関係がある。ファレイ数列は『数学セミナー2013年12月号』に掲載の寺澤順「有理数をカウントする数式」という記事でも紹介されていた。
ちなみに、なぜ、この数列に興味を持つに至ったかについては、高木関数に似たものを、シェルピンスキーのギャスケットから作るとどうなるのかなあと考えて、三角形の数を数えるときに必要になったからであった。この試み自体はたいして面白い結果にはならなかったのだが、好きな数列ができてよかった。流行ると面白いなあと思う。