模様の分類の話



ご存知ない方に自己紹介。私は模様を愛する総務のおじさんです。パズル懇話会日本折紙学会の会員です。日曜数学会数学カフェに出没しています。今年、日本科学未来館で開催されたサイエンスアゴラでは 日曜数学100連発 に登壇し「幾何学模様の不思議な世界」と題して発表を行いました。

今日は模様の分類について書きます。美しい幾何学模様は眺めているだけで心が躍ります。世の中には模様の図鑑がいろいろあります。ただ、すこし不満なことがあります。多くの図鑑では歴史的・地理的な模様の分類が行われているのですが、模様そのものの持つ性質によって数学的に分類されていたら、もっと楽しいのにと私は思うのであります。

模様にはふた通りあります。周期的な模様(繰り返し模様)と、そうでない模様です。周期的な模様とは平行移動によって、自分自身と重ねることができるような模様のことをいいます。平面上の周期的な模様、いちばん普通の模様たちを分類するとどうなるでしょうか。
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周期的な模様

じつは対称性によって分類すると17種類になることが知られています。といっても、なかなかイメージがわかないと思いますので、この17種類、それぞれ1種類ずつ代表を並べてみます。
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パターン認識のためには豊富な例が必要です。過去の記事「模様展示の標準化 その4」「模様展示の標準化 その5」「模様展示の標準化 その7」「模様展示の標準化 その8」などで、この17種類の分類それぞれについて、たくさんの例を見ることができるので、ぜひご参照ください。

……といって例だけ見ていても、どこが違うのか分かりにくいと思いますので、分類の意味を解説しましょう。対称性による分類と書きましたが、対称性とは「ある変換に関して不変であるような性質」のことを言います。周期的な模様では「どんな合同変換に関して不変なのか」が分類の鍵になります。平面の合同変換は、平行移動、回転移動、鏡映の合成でできています。模様の分類では、じつは次の7種類の合同変換による対称性を考えれば充分です。
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この対称性のどれをどんな風に持っているかで、上記の分類は行われています。詳しい説明は、wikipediaに譲ることにしましょう。


周期的でない模様

一方、周期的でない模様(繰り返さない)には、ランダムなものや置換タイリングによるものがあります。
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ランダムな模様の例としては、たとえば、こんなのがあります。ドミノ(正方形をふたつくっつけてできる図形)によるタイリングですが、ところどころ向きの違うドミノをランダムに混ぜることができます。
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置換タイリング(Substitution tilings)については、Tilings Encyclopedia でたくさん例を見ることができます。このブログでも「ペンローズタイルの作り方」「レプタイル その1, その2」「Self-tiling tile setsについて」などで関連の記事を見ることができます。ここでは一例としてレプタイルである、L型トロミノによる置換タイリングを示します。
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レプタイルという特殊な図形は、いくつかの自分自身と相似なタイルに分割できるので、分割を繰り返すとどんどん細分できます。これを拡大すると、上手くすれば平面全体のタイリングが作れます。


平面以外の模様

さて、ここまで平面だけを考えてきましたが、平面の枠を超えると、また違った世界が広がってきます。複雑な曲面(球面双曲平面その他)上の模様もありますし、3次元以上の世界で模様を考えることもできます。
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周期的な模様の対称性による分類。2次元では17種類でしたが、3次元では230種類になるそうです。過去の記事で模様のアニメーションを紹介していますが、これらは3次元の周期的な模様(空間2次元+時間1次元)と考えることができるので、いずれも230種類のどれかに分類されるのだと思います。
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3次元の非周期的な模様も知られています。たとえば、佐藤郁郎さんのコラムを辿ると、色々な例を知ることができます。

さて。ここまでの話題だけでも、模様の世界の奥深さを垣間見ることができたのではないかと思います。知れば知るほど、いろいろな疑問が湧いてきます。曲面上の置換タイリングはないのかとか。4次元はどうなのか。気になったら、調べて自分で描いてみましょう。新しい分類方法を考えてみましょう。

そうこうしているうちに、新大陸発見のように、誰も見たことのない、新しい模様が見つかるかもしれません!


予告:
日曜数学 Advent Calendar 2015 明日は「matsumoring」さんの「今年の日曜数学活動」。楽しみです!

by j344 | 2015-12-13 07:16 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(0)

最近凸五角形タイリングで大発見があった。なんと15番目のタイリングType15がアメリカの大学のチームによって発見されたのだ。14番目を発見したのはドイツの大学院生ロルフ・シュタイン(1985年)だったそうで、今回のタイリングは、じつに30年ぶりの新発見である。

Twitterなどでも話題騒然なのだが、ぱっと見、五角形の特徴が分かりにくいので、補助線を引いてみた。
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正方形と正六角形の半分が基礎になっている。敷き詰めてみると、こんな感じだ。
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けっこう雰囲気が変わる。編み物に応用したらどうかしらと、いま友人のニット作家の方といろいろ相談しているところ。ちなみに、この繋がり方だと自由度はゼロなので、これまで「凸五角形タイリング その1 」や「凸五角形タイリング その2 」で試みたような、どの瞬間も平面充填になっているようなアニメーションは作れない。

30年ぶりの新発見。これで打ち止めとは思いにくい。更なる新発見の序章となるか、ニュースの今後に注目して行きたい。

by j344 | 2015-08-03 01:01 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(0)

いわいまさかさんとのコラボ。凸五角形アニメのその2である。

既にいわいさんのブログ

で詳しく取り上げられている。凸五角形アニメと言いながら、
じつは途中で凹んだ五角形になったり四角形になったりする。

こんなのや
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こんなのだ。
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分類上は、知られている14種類のうちのtype13に属する五角形である。後の方のアニメは途中で形がするするっと切り替わって騙されたような気がする。過去にも書いたことがあるが、こういう動きを見るとゲシュタルト心理学で言うところのプレグナンツの法則を思い出す。

by j344 | 2015-05-27 14:06 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(0)

いわいまさか さんとのコラボ。今回も幾何学アニメだが、テーマはフラクタルから離れる。合同な凸五角形による平面充填である。

平面充填できる凸五角形には少なくとも14種類のタイプがあるらしい。http://katachi-jp.com/paper/26(2).pdfの4ページ目に記載がある。この14タイプの内、自由度がちょうど1の(パラメータ1つで描ける)ものは、9種類。この9種類は、パラメータを時間とともに変化させることで、自然にアニメーションにすることができる。ということで、いわいさんの力を借りてトライしてみたのが、Type3とType10のアニメ化である。ちなみに役割分担は、私が個々の五角形の座標計算を主に担当し、あとはいわいさんの方で形にしてもらった。
これがType3で
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これがType10
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静止したところでは、五角形ではなくて四角形になってしまっている(退化している)。Youtubeはこちら。
Type3 
Type10
Type10面積一定版

この他のタイプを自由度(アニメ向きかどうか)で分類すると、
自由度5× type1
自由度4× type2
自由度2△ type4
     type5
自由度1 type6
     type7
     type8
     type9
自由度1type3
     type10
     type11
     type12
     type13
自由度0× type14

こんな感じである。自由度1を◎と○に分けたのは、〇の4種類の計算にはarctan(タンジェントの逆関数)が出てきて、場合分けが面倒くさいので減点してみた。

さて。とりあえず、アニメができてよかったバンザイと喜んだのもつかの間。
https://www.youtube.com/watch?v=7G9dcEBXYY8
http://demonstrations.wolfram.com/PentagonTilings/
2009年にはこのような取り組みが、Ed Pegg, Jr. さんによって、すでに行われていたことを見つけてしまった。ただのアニメではなくて、インタラクティブな遊び方ができるので、ぜひ遊んでみてほしい。
さて、そうなると、これから何をするか。とりあえず、Type間の共通部分について調べてみたいと思っている。たとえば、Cairo pentagonal tilingはいくつかのTypeに重複して登場する。

それと、Ed Pegg, Jr.さんのツールでは除外されているけれど、パラメータを限界以上に変化させると凹五角形による平面充填ができる場合がある。落穂ひろいみたいな感じだが、この辺りをアニメ化してみても面白いかもしれない。

とりあえず、今日はここまで。

by j344 | 2015-05-14 00:05 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(1)

まだこのブログで紹介していない対称性。残りのpmg、pgg、pg、p2、p1について、例を列挙してみよう。番号は「模様展示の標準化 その7」と同じく、ストラックアウト方式でつけておく。

1 2 3
4 5 6
7 8 9

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pmgの格子は長方形格子。上下対称の他に「すべり鏡映」という対称性を持っている。更に点対称でもある(図の中心が回転の中心でないことに注意)。左右対称ではないのだが、たとえば、pmg-1のひとつのタイルに注目すると、それを左右反転したタイルが敷き詰めの中に含まれている(「模様展示の標準化 その7」と同様、ここで上下や左右と呼んでいる方向が、展示する向きの標準化に依存する点には注意して欲しい)。

pmg-6は『新刺し子』p34を参考にした。pmg-7は伝統文様の「矢絣」を変形・脱色したもの。pmg-9は『伏見康治コレクション第1巻 紋様の科学』p110の「流水」を変形・脱色したものである。

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pggも長方形格子。上下対称でも左右対称でもないが、すべり鏡映の対称性を持っている。また、点対称の性質も併せ持っている。

pmg-1は「桧垣」もしくは「網代」と呼ばれることが多い伝統文様である。pmg-8は、wikipedia「空間充填」の項の図である。pmg-9は「tilings and patterns」p31の図から作成した。


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pgも長方形格子。上下対称でも左右対称でもないが、すべり鏡映の対称性を持っている。pggとの違いは、点対称性がないことである。

pg-4は、中村義作(1980)「コンクリートの美学 ブロック舗装,タイル張りなどによる造形手法の追求」からの引用。pg-7は、泡坂妻夫『家紋の話』p301にある創作文様で「徳利網代」という名前がついている。


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p2の格子は斜方格子(平行四辺形の格子)。点対称の模様である。

p2-2は立方体の展開図。p2-8とp2-9は正八面体の展開図である。


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p1も斜方格子。平行移動によるくり返し(並進対称性)以外の対称性を持たない模様である。

p1-7は、5種類のテトロミノによる平面充填(テトロミノとは4つの正方形を辺に沿ってつなげた形。コンピューターゲームのテトリスで有名である)。p1-8とp1-9は4種類のペンタモンドによる平面充填である(ペンタモンドは5つの正三角形を辺に沿ってつなげた形のことである)。
by j344 | 2013-08-16 08:53 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(0)

平面の繰り返しパターンを対称性で分類すると17種類。まだこのブログで例を挙げていないものを列挙していこう。縮尺は「模様展示の標準化 その6」で述べた方法で標準化する。

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個々の模様を指すのに番号をつけておこう。図の上段左から、pmm-1,pmm-2,pmm-3.中段も左からpmm-4,pmm-5,pmm-6.下段、左からpmm-7,pmm-8,pmm-9とする。つまり、ストラックアウト(的抜き)みたいな並べ方だ。

1 2 3
4 5 6
7 8 9

pmmの格子は長方格子。左右対称、かつ上下対称の模様である。このうち、pmm-1,pmm-2は、うまく膨らましてやると「模様展示の標準化 その5」で紹介したp4mという分類の模様になる。

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pmも長方格子。pmmと比べると対称性がひとつ減る。左右対称性はあるが、上下は対称ではない模様である(という言い方は、向きの標準化に依存するのだが)。

pmmと同様のナンバリングをする(以下同様)。pm-3は「千鳥格子(hound tooth)」を脱色したもの。pm-5は、中村義作(1980)「コンクリートの美学 ブロック舗装,タイル張りなどによる造形手法の追求」『セメント・コンクリート (通号 398) 1980-04』p15にある模様である。

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cmmも左右対称かつ上下対称である。ただし、格子がpmmと異なる。cmmの格子は、面心長方格子(またの名を菱形格子)という。

cmm-1は『伏見康治コレクション第1巻 紋様の科学』p100によれば「れんがづみ」。cmmには、日本の伝統文様が沢山含まれる。cmm-2は「松皮菱」、cmm-3は「網目」、cmm-5は「立湧」という(寝かせてしまったけれど)。cmm-6は以前にも紹介したアルキメデスの平面充填形のひとつである。cmm-7は、ええと。アルハンブラ宮殿のタイルを脱色したものだったかな。

cmmの仲間にも、うまく膨らますとp4mになるものがあるのだが、今回は採集し忘れた。

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cmはcmmと同じく面心長方格子。左右対称だが上下対称ではない。

cm-7は伝統文様の「青海波」。cm-8は、何だったか。たしか異国の模様だ。cm-9はふたたび、中村義作(1980)「コンクリートの美学 ブロック舗装,タイル張りなどによる造形手法の追求」からの借用である。

今回は、ここまで。あとは、pmg、pgg、pg、p2、p1の5つである。
by j344 | 2013-08-11 00:19 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(0)

縮尺の標準化について、話が途中であった。以前「模様展示の標準化 その5」で格子の面積というような話をした。格子とその面積について、エッシャーのペガサスを例に考えてみよう。まず、ペガサスの輪郭の模写を示す。

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対称性p1に分類される模様である(着色は無視することにする)。それぞれのペガサスの体の部位で同じ個所、どこでもいいのだが、たとえば耳に注目する。

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模様の周期性が少しだけ分かりやすくなる。もう少しくり返して、赤丸だけ抜き出せば、こんな感じである。

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この赤丸を格子点と呼ぶことにしよう。ここで、くり返しの単位として、複雑なペガサスではなく、単純な形(基本平行四辺形)を選びたいのだけれど、じつはいろんな選び方が存在する。基本平行四辺形(さしあたり、格子点を頂点に持ち、内部や辺上には格子点を持たないような平行四辺形のことと思っておこう)は、たくさんある。

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正方形以外については、わざと変な選び方をしたように見えるかもしれないけれど、一般の模様で考えるとそうでもない。どれがスタンダードな格子か、なかなか決めづらいのである。

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たとえば、上のタイルを並べてみよう。

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どれも並べていくうちに、ペガサスの姿が現れてくる。それぞれ、くりかえしの単位として問題なく使えてしまうのであった。基本平行四辺形は「基本」のくせにひと通りではなくて困ってしまうのだが、じつは面積については、よく調べるといい性質を持っていることが分かる。

ダイヤモンドはなぜ美しい? (シュプリンガー数学リーディングス)

砂田 利一 / 丸善出版



この本のp33に「与えられた格子軍の基本平行四辺形の面積は、その取り方に依存せず一定である」という定理とその証明が載っている。有難いことに、我々の求める縮尺の標準化には、選び方は関係ないのであった。ともかく、どれでもいいので基本平行四辺形を選んでやって、その面積を標準化(たとえば1に)してしまえばいい訳である。

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平行四辺形の面積は上図の場合、S=|ad-bc|で計算できる(どこかで見たような式だけど、実際に行列式とちょっと関係がある)。

さて、標準化の話、面積については、これにて一件落着。なのだが、前回危惧した通り、六角格子(正三角格子)について、縮尺を修正する必要が出てきた。面倒臭いがそのうち遡って修正して行こうと思う。

展示の標準化については、角度の標準化の話がまだ片付いていない。模様の例は豊富な方がよいと思うので、ただいま作りためております。しばらくお待ちください。
by j344 | 2013-06-09 23:03 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(0)

レプタイル その2

さて、前回の「レプタイル その1」でご紹介したレプタイル。模様と何の関係があるのかが保留のままだった。次の図のような反復操作が行うと、平面敷き詰めと関係のあることが見えてくると思う。

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これは「ペンローズタイルの作り方」でもご紹介した、置換規則(substitution rule)による、模様の構成法である。いまは操作を繰り返すたび、ひとつひとつのタイルがどんどん小さくなって行くけれど、操作の都度拡大してやれば、どんどん平面を埋めていくことになる(基準の点をどこに選ぶかが平面充填のときにはちょっと問題になるけれど)。

ところで、ここまでご紹介してきたレプタイルは、どれも、縮小コピーのサイズが等しかった(互いに合同だった)。つまり、n-レプタイルが元のタイルをn等分していた。定義上は、自分の縮小コピー同士のサイズが違っていても構わないのではないかしら、と思うのだが(何か慣習でもあるのだろうか。不思議とそういうのをレプタイルと呼んでいるのは見たことがないのだが)、等分しないような例も色々と挙げることができる。

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(1)~(4)は正方形の正方形による分割。等分になるときもあるが、6以上なら任意の個数に分割できる。(5)のような分割は任意の直角三角形で可能である。(6)は「正方形をサイズがすべて異なる小正方形に分割せよ」というルジンの問題の、duijvestijnによる最少個数の解。(7)はコッホ雪片というフラクタル図形である。どれも輪郭線と中のタイルが同じ形になっている。

最後の(8)はアムマンのタイルという奴で、ちょっと変則的な置換規則を使うと、サイズの異なる2種類のタイルによる"非周期的な"平面敷き詰めを構成できる。置換規則は次のようなパターンだが、ご理解いただけるだろうか。

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ちなみに、アムマンのタイル張りについては、数学セミナー2012年2月号の秋山茂樹さんの記事「準結晶の数学的モデル」を参考にした。同じく秋山茂樹さんの"A NOTE ON APERIODIC AMMANN TILES"も参考になる、と思うのだけれど、ちゃんと読んでいません。あしからずご了承ください。

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6月6日、追記。英語を読まないのは悪いくせだ。wikipediaによれば、等分ではないタイプのレプタイルは、"irregular rep-tile"または"irreptile"と呼ばれているようだ。ここに色々な例があるのを見つけた。
by j344 | 2013-06-03 23:01 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(0)

レプタイル その1

幾何学における未解決問題集

H.T. クロフト / シュプリンガー・フェアラーク東京


によれば、n-レプタイルとは、次の条件(*)をみたす平面領域Rのことである。

(*) Rに相似なタイルをn個使ってR自身をタイル張りできる。

自分の縮小コピーn個で自分自身を分割できる、と言い換えても構わない。レプタイル(rep-tile)というのは、数学者ソロモン・ゴロムの命名で、「レプ」は本によってreplicationだとかreplicatingだとかreplicaだとか書いてあって、よく分からないけれど、日本語だと「複製」というのが適当なところだろう。「(自己)複製タイル」という訳である。爬虫類(reptile)に語呂合わせしてあるらしい。模様とどんな関係があるのかは後で考えることにして、とりあえず例を並べてみよう。

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内角が直角の倍数のものばかり集めてみた。たとえば(2)は2-レプタイル。(3)は3-レプタイルである。(5)~(7)を見るとこのL字型は、4-レプタイルであると同時に、9-レプタイル、36-レプタイルでもある。この他にもレプタイルは沢山ある。

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(25)~(28)あたりになると、多角形ではなくなって、頂点の数が無限個必要である。素焼きのタイルで作ることは不可能だけど、数学的にはとくに問題ない。

レプタイルの例の収集には、wikipediaの記事の他、模様の世界のバイブル

Tilings and Patterns

Branko Gruenbaum / W H Freeman & Co

を参考にした。ちなみに、この本の中ではレプタイルではなくて、"k-similarity tiling"と呼ばれているみたいだ。

レプタイルについて調べる中で、尊敬する折り紙作家の前川淳さんの名前がヒットした。前川淳さんの折り紙設計が、レプタイルに影響を受けていたということが、今回、改めて分かった。思わず、すでに絶版の名著のコピーを国会図書館に頼んでしまった。

ビバ!おりがみ

前川 淳 / サンリオ


by j344 | 2013-06-03 00:03 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(0)

前回の「模様展示の標準化 その4」で言及した、六角格子ベースのp3,p31m,p3m1,p6,p6mの内、残りのp31m,p3m1,p6mと、正方格子ベースのp4,p4g,p4mについて、模様の例を挙げておこう。


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これらの縮尺は、「模様展示の標準化 その4」で述べたやり方に基づいて決めている。すなわち、5×5の正方形を用意しておいて、p31m,p3m1,p6mについては、格子を構成する正三角形の面積を1に標準化。p4,p4g,p4mについては、格子を構成する正方形の面積を1にしている。角度についても対称性を考慮して決めた。

あとの9種類についても、同様の方法で標準化したいのだが、すこし事情が違うところがある。それは、格子を構成する平行四辺形の選び方が一意的ではない点である。ただし、その選び方で平行四辺形の面積が変わるかといえば、たぶん大丈夫だろう。ピックの定理により、それらの平行四辺形は、どれも面積が一致するからである。次は、この辺りの事情を整理しようと思う。

と、いま別のことが心配になり始めた。六角格子(正三角格子)のときだけ、単位を正三角形にしたのは失策だったかもしれない(他は格子を構成する単位がすべて四角形になってしまうので)。これについては、またいずれ、少し進んだときに、整合性を考えて見直すことにしよう。
by j344 | 2013-05-01 23:52 | 幾何学模様大図鑑 | Comments(0)